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【2026年版】相続土地国庫帰属制度の費用・要件と、売却したほうが得なケース
2026.10.23相続コラム
親から相続した土地が使い道もなく、固定資産税や草刈りの手間だけがかかっている。そんな悩みの解決策として注目されているのが「相続土地国庫帰属制度」です。ただ、この制度は国に費用を払って土地を引き取ってもらう仕組みなので、売却できる土地なら売ったほうが手元にお金が残ることも少なくありません。
相続土地国庫帰属制度は、審査手数料1筆1万4千円+負担金(原則20万円、面積などに応じて増額)を払って、相続した土地を国に引き渡す制度です。建物がある土地、担保権が付いた土地、境界が不明な土地などは対象外で、解体や測量などの準備費用もかかります。
国庫帰属は「お金を払って手放す」、売却は「お金を受け取って手放す」という点が最大の違いです。東京23区の土地は需要が根強いため、まず売却できるかを確かめ、売れない・費用が見合わない場合に国庫帰属を検討する順番をおすすめします。
▲ 当社YouTube「相続不動産の教科書」より|相続した“売れない土地”…どうすれば?失敗しない処分方法3選をプロが解説
相続土地国庫帰属制度とは?仕組みと基本ルール
相続した「いらない土地」を国に引き渡せる制度
相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日に始まった制度です。相続や遺贈で取得した土地のうち、一定の要件を満たすものについて、法務大臣の承認を受けて国に引き渡すことができます。
この制度ができる前は、不要な土地だけを手放す方法は実質的に「売る」か「誰かにもらってもらう」しかありませんでした。相続放棄をすると、預貯金や自宅を含むすべての財産を手放すことになります。そのため、地方の山林や農地、使い道のない土地を「仕方なく持ち続ける」人が多く、所有者不明の土地が増える原因にもなっていました。
国庫帰属制度は、この問題への対策として作られたものです。同じく所有者不明の土地対策として、2024年4月1日からは相続登記も義務化されています。「相続した土地を放置する」ことが以前より難しくなっているという流れの中で、この制度を理解しておくことが大切です。
申請できる人・申請できる土地
申請できるのは、相続または遺贈(相続人に対するもの)で土地を取得した人です。自分で買った土地や、相続人以外として遺贈を受けた土地は対象になりません。共有の土地は、共有者全員で申請します。共有者の中に売買で持分を取得した人がいても、相続で取得した共有者がいれば全員で申請できる扱いになっています。
対象は「土地」だけです。建物は対象外で、建物が建っている土地はそのままでは申請できません。また、宅地・農地・山林といった地目にかかわらず申請自体は可能ですが、後述する要件で多くの土地がふるい落とされます。「申請できる=引き取ってもらえる」ではない点に注意してください。
相続土地国庫帰属制度の要件|引き取ってもらえない土地
国が引き取った土地は、その後の管理費用を国民の税金でまかなうことになります。そのため、管理や処分に手間や費用がかかりすぎる土地は対象外とされ、要件はかなり厳しめに作られています。要件は大きく「申請の段階で受け付けてもらえない土地」と「審査の結果、承認されない土地」の2つに分かれます。
申請の段階で却下される土地
次のような土地は、そもそも申請を受け付けてもらえません。
- 建物がある土地(空き家・倉庫・朽ちた小屋なども含む)
- 抵当権などの担保権や、使用・収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路・墓地・水路など、他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地
特に影響が大きいのが「建物」と「境界」です。建物が残っている限り申請できないため、実家が建ったままの土地は解体が前提になります。また、隣地との境界があいまいな土地も多く、申請前に隣地所有者との確認や測量が必要になるケースがあります。
審査の結果、承認されない土地
申請が受理されても、審査で次のような事情が見つかると承認されません。
- 一定の勾配・高さがある崖があり、管理に過分な費用や労力がかかる土地
- 管理や処分を妨げる工作物・車両・樹木などが地上にある土地
- 除去が必要な埋設物(古い基礎・浄化槽・ガラなど)が地下にある土地
- 隣地所有者などとの争訟によらなければ、管理・処分ができない土地
- そのほか、通常の管理・処分に過分な費用や労力がかかる土地
審査では法務局による書面確認や現地調査が行われ、相応の期間(数ヶ月単位)がかかります。審査手数料は、却下・不承認となった場合や途中で申請を取り下げた場合でも返還されません。
東京23区の土地で引っかかりやすいポイント
東京23区の相続不動産では、次の点が国庫帰属のハードルになりやすい傾向があります。
- 古い家が建っている:解体しないと申請できず、解体費は自己負担
- 私道の持分を持っている:通路として他人が利用する土地は対象外になりやすい
- 境界標が見当たらない・ブロック塀の越境がある:住宅が密集した地域ほど境界確認に手間がかかる
- 古い建物の基礎や浄化槽が残っている:埋設物として不承認の理由になりうる
つまり、23区内の一般的な住宅地は、国庫帰属の要件を満たすまでに費用と時間がかかりやすいのです。一方で、23区の土地は狭小地や旗竿地であっても需要があることが多く、国庫帰属よりも売却のほうが現実的な選択肢になりやすいというのが、杉並区和田で23区の相続不動産を扱ってきた当社の実感です。
相続土地国庫帰属制度の費用|審査手数料・負担金・準備費用
国に払う費用:審査手数料と負担金
国に払う費用は2つです。
- 審査手数料:土地1筆あたり1万4千円。申請時に収入印紙で納めます
- 負担金:承認された後に納める費用。原則20万円で、土地の種類や区域、面積によっては面積に応じて増額されます
負担金は、国がその土地を管理する10年分の標準的な費用をもとに決められています。山林や一部の宅地・農地などは面積に応じて算定されるため、広い土地では20万円を大きく上回ることもあります。承認の通知を受けてから期限内に負担金を納めないと承認の効力が失われるため、資金の準備もしておきましょう。具体的な負担金額は、法務局が公表している算定方法で事前に確認できます。
なお、隣り合う複数の土地は、条件を満たせば負担金をまとめて算定できる特例もあります。筆数が多い場合は、申請前に法務局で相談しておくと安心です。
見落としやすい「申請前の準備費用」
実際の負担を大きく左右するのは、国に払う費用よりも、要件を満たすための準備費用です。土地の状態によっては、負担金より準備費用のほうがはるかに高くつくことがあります。
| 費用の項目 | どんなときに必要か | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| 審査手数料 | すべての申請 | 1筆1万4千円(返還されない) |
| 負担金 | 承認された場合 | 原則20万円。種類・面積によって増額 |
| 相続登記の費用 | 名義が亡くなった方のままの場合 | 登録免許税・必要書類の取得費、司法書士報酬など |
| 建物の解体費 | 建物・小屋などがある場合 | 建物の構造・規模・立地で大きく変わる。23区内は重機が入りにくく割高になりやすい |
| 測量・境界確認の費用 | 境界が不明な場合 | 隣地の数・官民境界の有無で変わる |
| 担保権の抹消費用 | 抵当権などが残っている場合 | 残債の返済や抹消登記の費用 |
| 工作物・樹木・埋設物の撤去費 | 放置物や古い基礎がある場合 | 量と内容しだい |
| 書類作成の依頼費用 | 専門家に申請書の作成を頼む場合 | 依頼先・土地の数によって異なる |
建物を解体して更地にすると、住宅用地の特例(固定資産税の課税標準が最大1/6になる特例)が使えなくなり、申請から承認までの間の固定資産税が上がる可能性もあります。費用は解体費だけでは済まない点に注意しましょう。
国庫帰属の手続きの流れ
名義を相続人に変更し、建物・担保権・境界・埋設物の有無を確認します。相続登記は義務化されているため、国庫帰属を使うかどうかにかかわらず早めに対応しましょう。
土地を管轄する法務局(本局)で、要件を満たしそうかを事前に相談できます。必要な準備の見通しが立つので、費用をかける前に利用するのがおすすめです。
申請書・図面・写真などを提出し、1筆1万4千円の審査手数料を納めます。
法務局が書類と現地を確認します。追加資料の提出や現地への立ち会いを求められることもあります。
承認されると負担金の額が通知されます。期限内に納付した時点で、土地の所有権が国に移ります。
国庫帰属・売却・相続放棄の費用比較
相続した土地を手放す方法は、主に「国庫帰属」「売却」「相続放棄」の3つです。費用面と使える条件を比べると、違いがはっきりします。
| 比較項目 | 相続土地国庫帰属制度 | 売却 | 相続放棄 |
|---|---|---|---|
| お金の流れ | 支払う(手数料+負担金+準備費用) | 受け取る(売却代金−費用−税金) | 原則かからない(申立て費用程度) |
| 手放す範囲 | 選んだ土地だけ | 選んだ不動産だけ | 預貯金なども含む全財産 |
| 建物付き | 不可(解体が必要) | 可(そのまま売れる場合も多い) | 建物も含めて放棄 |
| 期限 | 特になし | 特になし(特例には期限あり) | 相続開始を知った日から3ヶ月以内 |
| 税金 | 譲渡所得税はかからない | 売却益に譲渡所得税 | 相続税の対象外になる |
| 向いている土地 | 買い手がつかない土地 | 需要がある土地(23区の多くの土地) | 借金など負債のほうが多い相続 |
国庫帰属と売却は「お金の向き」が逆
最も大きな違いは、国庫帰属は手放すためにお金を払い、売却はお金を受け取って手放す点です。仮に国庫帰属で解体費・測量費・負担金などに合計数百万円かかる土地が、売却なら数百万円で売れるとすれば、両者の差は倍近くに広がります。
売却にも仲介手数料や測量費、税金などの費用はかかりますが、売却代金から差し引けばよく、手出しが不要なケースが多いのも利点です。「誰も買わないだろう」と思い込んでいる土地でも、隣地の所有者や不動産会社の買取であれば値段がつくこともあります。
相続放棄は「土地だけ」は選べない
相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てる手続きです。不動産だけを放棄することはできず、全財産が対象になります。預貯金や自宅など残したい財産がある場合は、現実的な選択肢になりにくいでしょう。また、3ヶ月を過ぎて相続を承認した後では放棄できません。その場合、いらない土地を手放す手段は国庫帰属か売却になります。相続放棄の詳しい判断基準は、放棄をテーマにした別記事で解説しています。
売却した場合の税金の考え方(仮の試算)
売却で利益(譲渡所得)が出ると税金がかかります。税率は所有期間で変わり、5年超なら20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、5年以下なら39.63%です。相続した不動産は、亡くなった方の取得日と取得費を引き継ぐため、親が長く持っていた土地なら5年超の税率になるケースが一般的です。
取得費が分からない場合は、売却価格の5%を概算取得費にできます。たとえば、以下は計算の流れを示すための仮の数字です。
- 売却価格:1,000万円(取得費不明のため概算取得費50万円)
- 仲介手数料などの譲渡費用:仮に40万円
- 譲渡所得:1,000万円−50万円−40万円=910万円
- 税額(所有期間5年超):910万円×20.315%=約185万円
- 手元に残る金額の目安:1,000万円−40万円−約185万円=約775万円
税金がかかっても、売れる土地であれば手元にお金が残ります。国庫帰属では収入はゼロで、費用だけが出ていきます。さらに、相続税を納めた人が相続開始から約3年10ヶ月以内(相続税の申告期限の翌日から3年以内)に売却すると、払った相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」もあります。実際の税額は特例の使い方で変わるため、税理士・当社にご確認ください。
売却の手順や税金、高く売るためのコツは相続した不動産の売却完全ガイド|税金・手順・高く売るコツで詳しく解説しています。
▲ 当社YouTube「相続不動産の教科書」より|【不動産相続】親から売れない土地を相続したらどうする?
売却したほうが得なケース・国庫帰属が向くケース
売却したほうが得なケース
次に当てはまる場合は、国庫帰属より先に売却を検討する価値があります。
- 東京23区など、一定の需要があるエリアの土地:狭小地・旗竿地・不整形地でも、買取や隣地への売却で値段がつく可能性があります
- 建物が建ったままの実家:国庫帰属は解体が前提ですが、売却なら古家付きのまま売れることもあります。解体費をかけずに済む場合があります
- 空き家の3,000万円特別控除が使える可能性がある:昭和56年5月31日以前に建てられた亡くなった方の自宅などを、要件を満たして2027年12月31日までに売却すると、譲渡所得から最大3,000万円(相続人3人以上なら1人2,000万円)を控除できる特例があります。2024年以降は、買主が売却の翌年2月15日までに耐震改修や取り壊しをする形でも対象になりました
- 相続税を払っていて、相続から約3年10ヶ月以内:取得費加算の特例で税負担を抑えられる可能性があります
- 共有名義で、相続人の意見がまとまっている:売却代金を分ければ、公平に手放せます
とくに建物付きの実家は、解体して国庫帰属するより、建物ごと売却したほうが費用・税金の両面で有利になりやすい典型例です。空き家の特例には期限や細かい要件があるため、適用できるかどうかは早めに税理士・当社にご確認ください。
国庫帰属が向いているケース
一方、次のような土地は国庫帰属が有力な選択肢になります。
- 不動産会社の査定や買取の打診をしても、買い手がつかなかった土地
- 地方の山林・原野・農地など、近隣にも引き取り手がいない土地
- 建物がなく、境界もはっきりしていて、準備費用があまりかからない土地
- 持ち続けると、固定資産税や草刈り・管理の手間が負担金を上回りそうな土地
判断の目安は、「国庫帰属の総費用」と「持ち続けた場合の将来コスト」、そして「売却で手元に残る金額」を並べて比べることです。一般的に、負担金は国がおおむね10年分の管理費用として算定したものです。10年以上持ち続ける前提なら、早めに手放したほうが総額で安く済む場合もあります。
迷ったときの判断手順
負債が多いなら相続放棄(3ヶ月以内)を検討します。財産を残したいなら、次のステップへ進みます。
仲介での売却と買取の両方で、売れるかどうかと手取りの目安を確認します。値段がつけば、売却を軸に進めます。
所有期間、取得費、空き家の3,000万円特別控除、取得費加算の特例が使えるかどうかを、税理士と確認します。
法務局の事前相談で要件を確認し、解体・測量などの準備費用と負担金を合計して、持ち続けた場合のコストと比べます。
この順番で進めれば、本来は売れた土地にお金を払って手放してしまう、という失敗を避けやすくなります。
判断前に押さえたい注意点
相続登記は国庫帰属・売却どちらでも先に必要
国庫帰属の申請でも売却でも、名義を相続人に変えておく必要があります。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、取得を知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になります。「どうするか決めてから登記しよう」と後回しにしていると、期限が迫ってしまいます。方針が決まっていなくても、登記は先に進めておきましょう。
空き家を放置すると固定資産税が上がることも
判断を先延ばしにしている間も、固定資産税や管理の負担は続きます。管理が不十分な空き家が特定空家等(または管理不全空家)に指定されて勧告を受けると、住宅用地特例(1/6)が外れ、土地の固定資産税が最大6倍相当になる場合があります。国庫帰属のために解体する場合も、売却まで建物を残す場合も、「いつまでに手放すか」の期限を決めて動くことが大切です。
特例の期限は国庫帰属の審査期間と重なりやすい
空き家の3,000万円特別控除は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」の売却が要件のひとつで、取得費加算の特例は「相続開始から約3年10ヶ月以内」の売却が要件です。国庫帰属を先に試して不承認になり、それから売却に切り替えると、特例の期限を過ぎてしまうおそれがあります。売れる見込みがある土地は、売却の検討を先にするほうが安全です。
共有者・相続人間の合意を先に取る
国庫帰属の申請は共有者全員で行い、売却も原則として共有者全員の同意が必要です。どちらの方法でも、相続人間で「手放す」という方針を共有しておかないと手続きが止まってしまいます。遺産分割の段階で、誰がその土地を相続し、どう処分するかまで話し合っておくとスムーズです。
まとめ:相続土地国庫帰属制度は「売れないと確認してから」の選択肢
相続土地国庫帰属制度は、審査手数料1筆1万4千円と負担金(原則20万円、面積などに応じて増額)を払って、相続した土地を国に引き渡せる制度です。ただし、建物がある土地、担保権が付いた土地、境界が不明な土地などは対象外で、解体や測量といった準備費用が負担金を大きく上回ることもあります。
売却はお金を受け取って手放す方法で、税金を払っても手元にお金が残る可能性があります。空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例など、期限付きの優遇も使えます。相続放棄は全財産が対象で、3ヶ月以内という期限もあるため、土地だけを手放したい場合には向きません。
とくに東京23区の土地は、狭小地や古家付きでも売却で現金化できる余地が大きいエリアです。まず査定で「売れるかどうか」を確かめ、売れない・費用が見合わない場合に国庫帰属を検討する。この順番が、費用面で後悔しにくい進め方です。株式会社Best toは杉並区和田を拠点に、23区の相続不動産について、査定・買取から税理士・司法書士との連携までワンストップでご相談をお受けしています。どの方法がご自身にとって得か迷ったら、お気軽にご相談ください。
相続した不動産、売る前にまずご相談ください
株式会社Best toは、東京23区に特化した不動産の売買仲介会社です。相続に強い体制で、「売るべきか・いつ・どう売るか」を税務・法務まで含めてご提案します。査定・ご相談は無料です。
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